一方的な戦闘を終えたアレックスを半ば呆然と眺めていると、目の前に小さな金属片が転がって来た。アレックスが破損したようには見えないが、的確に相手を制圧していくアレックスの戦い方からすると相手のものだとも思えなかった。第一、アレックスが戦っていたのは人間だ。
路地裏に倒れ伏した人間達は昏倒したままぴくりとも動かないが、殺した訳ではない筈だった。キースがいつも人間など殺してしまえとアレックスに対して言っているのを聞いている。アレックスはその度にのらりくらりと適当な理由を挙げていた。人間が好きな訳ではないだろうが、積極的に殺したいと思っている訳でもないのだろう。
それにしてもこれは一体どこから現れた破片だろうか。拾い上げたソレにはRE-1011という型番が刻まれている。断面や表面の感じからすると、今さっき破片になったものではなく、以前に破損して破片になったようなものに思えた。
訝しげに破片を眺めていると、アレックスが珍しく感情を露わにした様子でこちらにやって来た。引っ手繰るようにその破片を取り上げる。アレックスのパーツでこそないだろうが、彼の持ち物ではあったらしい。
何の破片なのかの説明があるかと期待したが、アレックスは破片をそっと仕舞い込むとそのまま口を開こうとはしない。言葉を探している訳ではなく、そもそも説明する気がないような様子だった。
待っていても何も語らないのだろうと判断して、「それは?」と訊ねると言いにくそうに「昔の仲間だ」とだけ答えが返って来る。
「昔の?」
「2年前だ」
それだけで事情はそれなりに理解出来た。詳しい事情は分からないが、あの破片は形見なのだろう。アレックスの表情はひどく痛ましそうだった。
いつも冷静なアレックスにこんな顔をさせるヒトの話を聞いてみたいと思うが、アレックスはこれ以上何も教えてくれないだろう。
薄暗い路地裏には、湿った風が吹いていた。
+++
スタンドアローン仲間だったアンドロイドメンテ用アンドロイドRE-1011をロイの反乱後に失った、って感じで考えていました。
見た目は番号で察して頂ければ。
見た目は番号で察して頂ければ。